みらいの描き方 髙橋 良徳

地域に開かれた、
かつての薬局を取り戻したい

私は現在、群馬第1事業部の部長として18店舗の運営マネジメントを担う傍ら、在宅医療推進部の部長も務めています。とくに力を入れているのが、薬局を地域に開かれたコミュニティーファーマシーにすること、そして、地域医療や福祉、介護との連携を強化することです。

かつて地域の薬局は、住民に開かれた場所でした。私の父は薬剤師で、自分で薬局を経営していました。地域の方々は病気にかかったときだけでなく普段から気軽に薬局を訪れ、父も調剤・投薬をするだけでなく、健康相談などに頻繁に乗っていました。しかし今では、多くの薬局は病気やケガをしたときに処方箋を持って薬をもらいに行く場所になっており、薬剤師は調剤や投薬に追われて患者さまと向き合う時間が十分に持てないのが現状です。

私が目指すのは、父の時代の薬局の在り方です。気になることを気軽に聞ける健康相談窓口でありたい、処方箋がなくても気軽に足を運べる集いの場でありたい、そう願って、薬局改革に取り組んできました。そして、ファーマみらいとしても、国が「かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師」を推進する以前から、患者さまとの1対1のつながりを大切にするという方針を貫いてきました。

会社が認めた挑戦で、
思い描いた夢を実現

薬局改革の取り組みの一例が、群馬県伊勢崎市のかけづか薬局です。2013年に店舗をリニューアルした際に、木のぬくもりが感じられるロッジ風の仕様にし、車椅子でも動きやすいよう動線を考え、お茶を飲めるカフェスペースも設けました。いわゆる「薬局っぽくない薬局」にしたかったのです。ファーマみらいとしても初めての試みでしたが、当時、管理薬剤師を務めていた私が、目的やリニューアル後の将来像などのエビデンスを明確に提示すると、やりたいならやってみたらいいと、承認してもらいました。

オープンするまでは少し不安もあったのですが、かけづか薬局は今では患者さまの憩いの場となっています。カフェスペースの壁面に、患者さまがリハビリの一環で描かれた絵や作品を飾っているのも好評です。口コミで評判が広がって、お客さまの数も増えました。自分が思い描いていたことは間違いではなかったと確信できたことは意義深く、やりたいことに挑戦させてくれた会社にはとても感謝しています。

患者さまのニーズにシームレスに
対応するため、介護事業部を創設

薬局を地域に開かれた場に変えていくのと同時に進めているのが、薬局にヘルスケアや介護の窓口を設置することです。群馬エリアでは薬を患者さまのご自宅に届ける在宅も多いのですが、ご自宅へ伺うと、薬以外の相談を受けることが多々あります。ご相談内容は、ヘルパーによる居宅支援、ベッドや杖といった介護用品、自宅のリフォームなど多岐にわたるのですが、いずれも有資格者しか判断や販売ができないため、私たち薬剤師では対応できません。一方、患者さまも誰に相談すればいいかわからず、身近な存在である私たちに相談をされていたという状況でした。

そこで、薬以外のご相談にシームレスに対応するために、社内に介護や福祉を扱う事業部を設けてはどうか、と考えたのです。東邦ホールディングスには介護事業部門があったので、それをファーマみらいの一事業部として組み込めないかと、会社側に提案をしました。結果として、ファーマみらいがM&Aするというかたちで(もしくは、「吸収合併するというかたちで」)この案が実現しました。現状では介護・ヘルスケアの窓口があるのは1店舗のみですが、今後はこれを拡大していく予定です。東邦ホールディングスという大規模な組織だからこそできたことであると同時に、柔軟で迅速な対応力がある会社だということを改めて実感した案件でした。

活躍の場は薬局の中だけじゃない。
社会に貢献できる薬剤師に

私は中途入社してから約17年間、この会社に勤めてきました。若い頃に点として描いていた夢や目標を一つひとつ達成することで、点が線となってつながり、つながった先に今があり、さらに未来へとつながっている。そんなふうに感じています。そして、こうして自分がやりたいことを実現できたのは、営利だけを目的とせず、社員の意欲を大切にしてくれるこの会社だからこそ。ファーマみらいの社員であることは、私の誇りです。

今後は、薬による治療だけでなく、予防や介護にも力を入れた薬局づくりをさらに進めていきたいと考えています。具体的には、血圧や肌年齢、骨密度などを測れる機器を設置し、健康な人も気軽に立ち寄れる次世代型コミュニティーファーマシーのオープンを進めていきます。地域住民の健康への意識を高めることは、病気の予防につながります。病気にならなければ、薬を飲む必要もありません。ポリファーマシーの考え方が浸透し、薬を飲ませる薬剤師から薬を飲ませない薬剤師へと、薬剤師の役割も今後大きく変わるでしょう。それは結果として国の医療費削減にもつながり、大きな視点でも意義のあることなのです。

薬剤師の活躍の場は、もはや薬局の中に留まりません。薬剤師を目指す皆さんには、身につけた薬学的な専門知識を、地域の方、他職種の方に還元する、言ってみれば社会に還元する、という大きなビジョンを持ってほしいと願っています。

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